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更新日:2020年11月24日

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私の生活体験ー平和な笑顔とおびえた私 (中台・女性・50歳)

 昭和19年4月、私が匝瑳国民学校(現在八日市場市)に入学した時は戦争の真最中でした。父は他の学校の教師でしたが、母は私と同じ小学校の教師でした。 
 敵の飛行機がいつ攻めてきて空襲になるかわからないので、朝学校へ行ってもランドセルの中にお道具は入れたままでした。アイウエオを教わっていると、突然サイレンがウーウーウーと鳴ります。
 「それ、敵の飛行機が来たぞ。早くしないと爆弾を落とされるよ。」と先生に言われて、みんな大急ぎでランドセルをしょって防空頭巾をかぶって、うす暗い防空壕に押し合いながらかくれました。一時間位かくれていて敵の飛行機が去ってしまうと、また教室で勉強します。するとまたサイレンがウーウーウーと鳴ります。「それ、かくれろー。」とばかり、また防空壕へ・・・というぐあいで、落ち着いて勉強などできませんでした。
 防空壕に逃げる時、敵の飛行機が火を吹きながら落ちていくのが見えました。その時、子ども心に「あの中の人は、どうなったろう。」と心配したのを覚えています。

 お昼は、今のようにおいしい給食などありません。ごはんのまん中に赤い梅干しがちょこんと一つの”日の丸弁当”です。それにのりの佃煮か卵焼きが入っていたら最高です。母は、「こんな日の丸弁当ばかりを毎日食べていたのでは、受け持ちの子どもたちも栄養失調になって大きくなれないな。」と心配して、手作りのおやつをつくりました。そして受け持ちの教室の後ろに紙の袋に入れて下げておき、子ども達が休み時間に自由にとって食べられるようにしていました。
 私は、放課後母の受け持ちの5年生の教室へ行って、大きなお兄ちゃんお姉ちゃん達とそれを食べるのがとても楽しみでした。”どんなおいしいおやつか”って?何とそれは、卵のからをきれいに洗ってこんがり焼いて、ごま、にぼし、ぬかをかるくいってまぜてすり鉢ですったもので、ふりかけのようなものだったのです。今ではとても食べる気にはなれませんが、でもカルシウムなど栄養たっぷり、そのせいか私も虫歯など一本もできませんでした。
 今の3年生の国語の教科書に出ている”お母さんの紙びな”で、「戦争中は、おいものつるも食べていました。」とありますが、当時私にはとてもおいしかったので、学校でこの教材を教えた時、葉につづいているやわらかい茎を油いためにして、受け持ちの子ども達に味見をさせたら、「先生、とてもおいしいよ。もっとちょうだい。」と大よろこび。今でも食べれば、おいしいものもあるんですね。
 着る物では、母の編んでくれたセーターですが、ふかふかの毛糸で編んだものではありません。いらない布を3センチ幅位にさいて、それをひものように細くして、それで編んだものです。ですからとても重くて肩がこりそうでした。でも母の気持ちがこもっていて、とても暖かかったのをおぼえています。
 そのうちに、戦争が終わりました。

 ある日、恐ろしいことがおこりました。私は、学校が終わってみんなが帰っても、母と一緒に帰りたいので一人で学校に残っていました。突然学校に、ブーッとすごいスピードで砂けむりをあげて、アメリカ人3人が乗ったジープが乗りこんで来ました。”アメリカ人に会ったら、必ず殺される”というも聞かされていましたから、私は、「あ、もうだめだ。殺される。」と思いました。
私はもうびっくり。急いで木製の教卓の中にかくれました。こう考えました。「殺されるとすれば、先生でここにいるお母さんもいっしょだな。だったら殺されてもいいや・・・。」と。私は度胸を決めて、ソーッと教卓の中からぬけ出してしまいました。
 やがて外国人は、2階を一まわりして帰ってしまいました。私は、「誰も殺されないで良かったなあ。」と心から思いながら、ジープを見送りました。

 今、成田市では、学校へ外国人講師を招いています。
 「マイネームイズ、〇〇。」等と言って、ロビンさんと喜々として握手をしている子ども達。同じ小学校2年生で、同じ外国人に接しているのに・・・。42年前、「殺される」と教卓の中でおびえた私と、何という大きな違いでしょう。-笑顔と恐怖ー。今の、この子ども達の幸せがいつまでもいつまでも続きますよう祈りながら、ペンを置きます。

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